カユウの趣味日記、ときどき子育て

本と文房具とデジタルが好きなIT系企業で働くカユウの趣味日記と子が育った記録

手紙には人と人との心を繋ぐ魔法が詰まっている『拝啓、最果ての勇者様へ 竜王の姫とめぐる旅』

手紙には人と人との心を繋ぐ魔法が詰まっている『拝啓、最果ての勇者様へ 竜王の姫とめぐる旅』

勇者と魔王の物語は、勇者が魔王を倒してめでたしめでたし、で終わりますよね。
では、その後はどうなっていると思いますか?
『拝啓、最果ての勇者様へ 竜王の姫とめぐる旅』 は、勇者と魔王の物語の後日譚です。

人側と魔族側に分かれて戦ったその後、魔法による通信が制限されたファンタジー世界では、遠方との連絡手段は「手紙」。
その手紙を届けるポストマンという職業についているのが、主人公である"最後の勇者候補"アルノス。
ヒロインは"勇者に倒された元竜王の娘"エリヤ。
ポストマンとして、配達の旅を通じて絆を深めていく二人の物語なのです。

1章ごとに話としては完結しつつも、アルノスとエリヤの関係性が少しずつ変わっていきます。
基本的に語り部はアルノスなので、エリヤと二人で配達の旅をしていく中での変化が素晴らしいのです。
アルノスの葛藤に近いものを感じたことがある人もいるんじゃないでしょうか。
その葛藤をより深めていくのが、本作独自の聖剣の能力。
それを聖剣の能力にしちゃう!?と思うような独自の能力のせいで、アルノスの葛藤はより深まってしまいます。

そんなアルノスにアドバイスしてくれるのが、勇者や勇者の仲間です。
物語の序盤でアドバイスを受けたアルノスは素直にうなずくことができません。
それは、アルノスの悩みがあるからこそ、アドバイスを受け入れることができない、というところに繋がっていきます。
でも、最後にアルノスが出した結論には、彼らのアドバイスも影響しているんじゃないかな~。

アルノスとエリヤの関係性が変わるきっかけは、ポストマンが運ぶ「手紙」。
「手紙」は、自らの手で言葉を紡ぎ、送った相手に気持ちを届けます。
1章ごとに、さまざまな理由で送られる手紙が出てきます。
平和になったからこそ、送られる手紙なのです。
送った側も、もらった側も、手紙1つで考え方を変えることができる。
そんな素敵な手紙をやり取りできたら、また違った人生の見方ができると思います。

現代はSNSやチャットといったデジタルのやり取りが便利で手軽です。
しかし、それらがすべて封じられてしまったとき、遠く離れた人と気持ちを通じ合わせる方法はやっぱり「手紙」だと思います。
もし、すべてのデジタル通信が使えなくなってしまったとき、あなたは誰にどんな「手紙」を書きますか?

勇者が平和にしたあとの世界。
配達の旅をする勇者候補と竜王の娘の物語。
すれ違い、重ね合いながら、お互いを理解していく。
このどうしようもなく美しい世界をぜひ読んでみてください。