夜ふかしログ

30代サラリーマンが育児・家事・在宅勤務が終わったあと、夜更かしをして読んだ本を紹介したりしなかったりするブログ

スタンドUPスタート 1 / 福田秀  (著)

無料試し読みを読んで、面白かったのですぐに購入しました。
起業後進国である日本を起業先進国にしたい、という夢を持つ三星太陽が、さまざまな人とともに起業していく物語です。

2020年3月に発表された経済残業書GEM調査によると、「自身に起業する力がある」と答えられた者の人数は、日本がダントツの最下位です。
作中でも言及されているので、以前からダントツで最下位だったのでしょう。 また、日本の起業活動率 TEA (人口100人中3.5年以内の起業家の数)は5.4で、世界の主要50か国中48位。
日本より下はイタリア (2.8)、パキスタン (3.7) の2か国しかありません。
さらに、起業活動の認知度を示す起業浸透率が50か国中50位、先進国平均で53.2%に対して、日本は17.1%しかありません。
作中では、49か国中47位と言っているので、他の国は上がっているようです。

このような結果になった理由として、教育や情報発信の面で、起業に消極的な姿勢を見せているからだと思います。
僕自身もそうですが、働くことを考えたとき、アルバイトや就職など既存の企業に所属することを選ぶ人が多いでしょう。
起業は一部のアイデアマンや選ばれし人がチャレンジすることで、凡人にはできないこと。
そういうイメージになっているから、起業を選ぶ人は少ない。
うまくいかなければ借金まみれ、再起不能
そんなことを言われてもなお起業を選ぶのは、僕にはムリです。

漫画家やデザイナー、音楽家になりたい。
その夢を追って、日々努力している人たちがいます。
でも、その夢を明かすと、学校のクラスメイトからは嘲笑され、先生や周りの大人には反対される。
場合によっては、本人の人格否定におよんでいる事例を聞くこともあります。

起業後進国である日本を、起業浸透率90%以上の起業先進国にする、という太陽。
もし、そうなればサラリーマンでも、起業家でも、好きに選ぶことができます。
働き方の選択肢が増えれば、自由な生き方ができる。
そうなれば、男性の育休や産休、女性の社会進出などは小さな問題になっていきますよね。

この漫画を読めば、起業に対するイメージが大きく変わりますよ。

林田さんかっこいい!

第1話で太陽にそそのかされて起業する林田さん。
メガバンクと呼ばれる銀行で、次長という管理職にいましたが、働き方改革により、管理職も窓口業務を担当することに。
受け持ったバイオ系ベンチャー企業への融資をお断りしたところ、別のところから資金を得たそのベンチャー企業が大化け。
金の卵を逃したと言われ、50歳を過ぎているのに子会社の保険会社に出向させられます。
不満たらたらに仕事をしていました。
そんなある日、「人間投資家」を名乗る三星太陽と出会い、林田さんの人生が変わっていきます。

銀行員で、融資担当だった林田さんの経歴に目をつけた太陽は、ベンチャー企業と銀行のマッチメーカーを提案します。
しかし、50をすぎ、出向させられたとはいえ保険会社の部長である林田さん。
妻も子もいる身で起業なんかできるか、と太陽の提案を打ち返します。 とはいっても、太陽のほうが上手。
渋沢栄一の言葉でゆさぶりをかけ、さらには適当な事業計画を話し、林田さんを釣り上げます。
銀行員という利点を生かし、融資担当の銀行員の負担を下げるための稟議書(仮)を作るというアイデアを提示。
林田さんは経験から太陽のアイデアの有用性を認めます。
起業をするための前準備として実施する事業の流れを試すため、ベンチャー企業の経営者100人を相手取り、計画書代行業をやることになった林田さん。
仕事帰り、家、通勤途中。
暇があればひたすらベンチャー企業がやっていることを詰め込み、計画書代行を進めていきます。
50を超えた人が全力で取り組むのもかっこいいのですが、さらにかっこいいと一幕が。

太陽が出資しているゲーム会社の社長、大空虎魂 (おおぞらどらごん) 、通称虎が最初から一緒に行動してくれているのですが、虎が前科持ちで、少年院でプログラミングを覚えたことを林田さんに告げます。
それでも仕事につけなくて困っていた虎は、助けてくれた太陽を尊敬しているのです。
その上で、太陽がここまで協力しているのだから、林田さんが逃げたり裏切ったりしたらぶっ殺すと宣言します。
それを聞いた林田さんの第一声は、「君はすごいんだな」。
これまで銀行員というレールのうえを走ってきた50過ぎの林田さんが、自分の子供よりも年下と思われる虎に素直に「すごい」と言えるかっこよさ。
計画書代行をやってからなのか、その前からなのかはわからないですが、ちゃんと相手を見ることができて、きちんと相手を讃えることができる林田さんがかっこいいんですよ!
そして、1年後。
古巣の銀行に、融資を依頼しに行くのです。
しかも、半年間で300件もの事業を手伝ったうえで、銀行に融資を依頼しに行きます。
ここがすごいかっこいいんですよ。

1巻には、林田さんがかっこいいお話の他に、大学4年生の神崎くんが逆就活型サイトを作るまでのお話と、主婦の音野さんがマンション管理業を始めるまでのお話、それから太陽の経歴や「人間投資家」を名乗るようになったきっかけが明かされるお話が掲載されています。
どのお話もワクワクできること間違いなしです。

おわりに

林田さんが言うように、僕もレールを外れるのは怖い。
レールの上を走っていると思う人は、みんな怖いと思う。
特に日本は、一度でもレールから外れた人には厳しい社会だと思う。
だから、レールから外れないことを第一に考えてしまうんだと思う。

でも、レールの上を走っているからって本当に幸せなのだろうか。
レールから外れていたら不幸なのだろうか。

人それぞれ、幸せの価値観は違う。
その人自身が幸せだと思っていれば、レールの上かどうかは関係ない。
それこそが自分の人生を選べると言えるのではないだろうか。

今の仕事で、息苦しさを感じていたり、納得感がなかったりする人にぜひ読んでほしい一冊です。