夜更かし乱読家のメモノート

30代サラリーマンが育児・家事・リモートワークが終わった夜に読んだ本を紹介したりしなかったりするブログ

「君主論」を参考文献にした異色の異世界内政ファンタジー『現実主義勇者の王国再建記 1』/ どぜう丸  (著), 冬ゆき (イラスト)

参考文献に書かれた「君主論」という文字。
まさかライトノベルと呼ばれるレーベルから刊行された書籍の参考文献で目にするなんて。
作中、主人公の相馬一也が君主論マキャヴェッリの名を出しています。
君主論」は現実主義の古典とも呼ばれているそうなので、現実主義者を標榜する相馬一也が読んでいてもおかしくはないですね。
とはいえ、地方公務員を目指している社会経済学部の大学生が諳んじられるほど読み込む本ではないと思いますよ。

その相馬一也のバイブルともいえる「君主論」ですが、書かれたのは16世紀にイタリア。
ニッコロ・マキャヴェッリによって書かれた、様々な君主や君主制の国をを分析し、君主になり権力を保持し続けるにはどのような力量が必要なのかが記載された国家政治論です。
その思想は人間の心理や思考、行動パターンの鋭い洞察や分析に根差したものであるところが、現実主義の古典と呼ばれるようになった所以でしょう。
約500年前に書かれたとはいえ、その人心掌握の方法や、巨大な権力を扱うときの注意点は、現代に生きる私たちが読んでも説得力があります。
君主を経営者、国家を企業と置き換えると、リーダーシップ論やポジショニング理論など現代の経営学にも通じますね。
さまざまな訳書や解説本が発刊されていますので、一度は読んでみることをおすすめします。

さて、「君主論」や孫氏を読んでいる相馬一也は、ある日、異世界に勇者として召喚されてしまいます。
召喚したのは、中世ヨーロッパのようなエルフリーデン王国。
自分の身を守るため王と宰相と議論を交わした相馬一也は、勇者として召喚されたはずなのに、気がついたら王位を譲られているのです。
王位を譲られた相馬一也は、持ち前の合理的精神と現代知識を組み合わせ、次々と新しい政策を打ち出し、かたむいていた王国の財政を立て直していきます。
そして、相馬一也による王国改革の方向性を民衆に知らしめた政策。
唯才令。
「ただ才あらば用いる」の一言で始まった政策は、多くの人材を集め、さらに王国改革を加速させていくのです。
とはいえ、国内にも国外にも心配事は山盛り。
まだまだ相馬一也によるエルフリーデン王国の改革は始まったばかりなのです。

才あらば用いる、と聞いてピンときた方は、三国志が好きな方ですね。
そう、曹操が出した求賢令ですね。
三国志演義では描かれていないかもしれません。
曹操実力主義であったことがわかる逸話です。

他にも、孫氏の兵法を引用している場面もあります。
僕が気付いていないだけで、相馬一也の政策のもとになったものが君主論以外にもたくさんありそうですね。
そして、登場人物たちの心理や思考、行動パターンが現実的なのです。
僕らが知らないだけで、本当にこの異世界はあるんじゃないか。
そう思ってしまうほどの説得力のある作品です。