夜ふかしログ

30代サラリーマンが育児・家事・在宅勤務が終わったあと、夜更かしをして読んだ本を紹介したりしなかったりするブログ

自分の命をかける覚悟をした12人の子どもたちの物語『十二人の死にたい子どもたち』 / 冲方 丁 (著)

自分自身の存在すべてをかけるような行動をしたことはありますか?

この物語を読んで、文字通り自分自身の存在すべてをかけるような行動をしたことがないことに気がつきました。
自ら行動している、すべてをかけていると言っても、僕のようにある程度の保身をしている人のほうが多いでしょう。
そんな方々にぜひ読んでいただきたい1冊があります。

この物語は、死にたいと願った子どもたちが廃病院に集まるところから始まります。
12人が集まるはずだったのに、なぜかその場には13人います。
誰が連れてきたのか。
それを聞きたくても、13人目はベッドの上で沈黙したまま。
誰が嘘をついているのか。
13人目がいる状態で、集まった目的を達成してよいのか。
12人の少年少女たちが、自分自身のすべてをかけて話し合い、行動していきます。
12人の少年少女がどうなったのか。
その結果は、ぜひ本書を読んで、あなたの目で確かめてください。

この物語を生み出したのは、冲方 丁さん。
『カオス レギオン』や『マルドゥック・スクランブル』の著者と聞けば、ピンとくる人もいるだろう。
恥ずかしい話、僕はずっと<おがた てい>さんと読んでいました。
『カオス レギオン』を読んでいたにもかかわらず。
本屋さんで本を買うときは、いつも平積みされているところから買っていて。
当時、友人との会話の中心は、著者名ではなく作品名だったので。
一言一句覚えているわけではないので、著者名を口にしたかもしれません。
しかし、友人から指摘がなかったことだけは、間違えたままだったので間違いないでしょう。
僕が読み方の間違いに気がついたのは『天地明察』が映画化されたとき。
著者の名前が読み上げられたとき、ようやく間違いに気がつきました。
<うぶかた とう>さん、と読むのだと。
冲方 丁さんの読みは<うぶかた とう>さんです。

個人的にハマったポイント

少しずつ読もうと思って『十二人の死にたい子どもたち』のページをめくったにも関わらず、読み始めたその日のうちに読み切ってしまいました。
それぐらい物語に引き込まれてしまったのです。
僕が個人的にハマったポイントを3つ、ご紹介します。

わかりやすいのに凝っている表現

文字情報しかない小説は、書かれている文字を読み、読者が頭の中でそのシーンの絵を描いていきます。
挿絵がある場合もありますが、全場面の挿絵があるわけではありません。
読者がイメージしやすい文章を書くことができることが、多くの読者を獲得できるきっかけの一つです。

わかりやすくイメージしやすい文章の中にも、凝った表現がちりばめられているのです。
凝った表現によってイメージ化が阻害されることはなく、むしろアクセントのようになって、その部分が色づいたように感じられるのです。
イメージを描いているのは自分自身なんですけどね。

さまざまな事情をかかえた子どもたち

物語中、子どもたちが廃病院につどった理由が明かされていきます。
さまざまな事情のある子どもたち。
共感できる子もいれば、そんな理由で?と言いたくなってしまう子もいます。
ですが、どんな理由にせよ、その選択を選んだ子どもたちからすれば、重大な理由なのです。

子どもたちが抱えている事情と、13人目がいる理由は密接に関わっています。
しかし、同じ目的であつまったからといって、そう簡単に自分の事情を明かすことはできません。
もし明かしてしまったら、廃病院に行くことになったきっかけと同じことが起こってしまうかもしれません。
同じ目的を達成する。
ただそれだけで繋がった共同体とも言える12人の心中は複雑なのです。

全員一致を目指した先に見える結末

廃病院にあつまった12人には一つの原則があります。
それが全員一致。
全員が意思を一つにしなければ、目的を達成することはできません。
集まった時点では、それぞれが覚悟を決めていたことでしょう。
しかし、13人目の存在という不測の事態により、すっきり納得できない状態になってしまうのです。

12人は話し合い、行動し、全員一致を目指します。
徐々に明かされていくそれぞれの事情。
耳にしてしまった事情を受け入れられる子もいれば、受け入れられない子もいます。
明かされた事情により、さらに事態が混迷していくこともあります。

物語の最後で、12人はようやく全員一致をするのです。
読んでいるこちらの心がぐちゃぐちゃになりつつ、子どもたちが話し合い、結論を出す姿に涙腺を刺激されたことは言うまでもありません。

まとめ

この物語には、子どもしか登場しません。
しかし、子どもたちが悩み、決断した背景には、大人がいます。

僕にも子どもがいます。
僕も大人に分類される人の一人として、子どもたちに何ができるのか。
まだ年齢一桁台の子どもたちが、無事に独り立ちしていけるようにする。
そのために、僕の子どもたちが12人と同じように悩んだとき、すぐに手を伸ばせるよう常日頃から子どもたちと向き合っていかなければと心を新たに覚悟しました。
それが、僕自身が全身全霊をかけて取り組むことだと思いました。

子どもがいる方だけでなく、凝った表現の物語を読みたい方、いろいろな考え方を目にしたい方、子どもたちの出した結論が気になる方は、ぜひ読んでみてください。

2019年1月に映画化もされています。
文字を読むのがつらいという方には、映画版がオススメですよ。
あの文字数を映画の枠の中にどうやって収めたのかが気になるので、僕も観てみようと思いました。