夜ふかしログ

30代サラリーマンが育児・家事・在宅勤務が終わったあと、夜更かしをして読んだ本を紹介したりしなかったりするブログ

転生したらスライムだった件1 / 伏瀬  (著), みっつばー (イラスト)

実は、小説家になろうというサイトで連載されているときにリアルタイムで完結まで読みました。
すごくおもしろく、更新が楽しみな作品でした。
アニメ化というニュースを見たときには、アニメ好きの妻に見た方がいいと強くおすすめしたほどです。
区切りのよいところで完結となったので、作者の方の書きたいところまで書ききったのだと思っていました。
書籍化されたといっても、小説家になろう版で描かれたストーリーの骨子を変えるようなことはないだろう、という思い込みがありましたから。
なので、妻がアニメを面白いと言ってくれてうれしかったのですが、一緒に見ることはしていませんでした。

それが、2021年7月から放送されている第2期第2部のアニメを見て、こんな話だったっけって思ったのが書籍に手を伸ばしたきっかけです。
登場人物の名前は、小説家になろう版で読んだものと変わっていません。
ですが、小説家になろう版にこんな話あったっけ?という状況がアニメで描かれているのです。
知っていると思い込んでいた作品の、知らない話。
それに気づいた瞬間、Kindle 版の購入ボタンをぽちっと押しておりました。

ざっくりしたあらすじ

主人公の三上悟は、ゼネコンに務める中年サラリーマン。
ある日、仲良くしている後輩に頼まれ、独身にも関わらず結婚の相談に乗ることに。
明らかに当てつけだろうと思いながら、後輩の彼女に挨拶をします。
二人と連れ立って店に行こうとしたところで、運悪く逃走中の通り魔と遭遇。
後輩を守り、三上悟の人生は幕を閉じたはずでした。
しかし、気が付いたときには生きているが、目が見えず、耳も聞こえないという状況に。
そう、三上悟は最弱と名高いモンスター、スライムに転生してしまったのです。

スライムに転生した三上悟は、その世界で天災級モンスターの"暴風竜ヴェルドラ"と出会ったことで、運命が大きく動き出します。
ヴェルドラに"リムル"と名付けてもらい、スライムとしての新たな異世界生活をスタートさせます。
その矢先、ゴブリンと牙狼族との争いに巻き込まれた結果、いつの間にか主として君臨することになってしまいます。

"捕食者"と"大賢者"という2つのユニークスキルを武器に、最強のスライムへと駆け上がっていく。
転生したらスライムだった件』は、リムルとなった三上悟の成長物語なのです。

キャラクター設定の上手さ

後輩の彼女に挨拶する際、デリカシーに欠けるジョークを口にしてしまうあたり、そういうとこやぞって思った読者も多いはず。
そのジョークを聞いた後輩の彼女やフォローする後輩の反応、そのあとの体を張って後輩を守る行動から、なんとなく三上悟の人間性が見えてきます。
調子がよく、ちょっとひねくれて、それでいて当てつけとわかりつつも相談に乗る形で祝福しようと切り替えの良さ。
そして、自分の身を顧みず、後輩のために突発的な行動がとれる判断力。
そんな三上悟の人間性だからこそ、スライムのリムルとなってからの波乱万丈が生まれるのです。

ハラハラドキドキの展開があるからこそ、ストーリーにメリハリが生まれるといわれています。
いろいろな作品でハラハラドキドキの展開がありますが、1巻でのきっかけの多くは、リムルが思い付きやノリで行った行動なのです。
主人公をついつい格好よくしすぎて、現実味のない完全無欠のヒーローになっている作品も数多くあります。
本作の主人公であるリムルは、ほどほどに格好いいんですよ。
調子がよく、ちょっとひねくれているからこそ、物語に起伏を起こします。
そして、切り替えの良さと、仲間のためが中心にある判断力が、起伏を収束させるために必要なのです。

そんなリムルを取り囲むキャラクターたちも、一癖も二癖もある個性的なキャラクターばかり。
リムルがやらかすごとに、どんどん仲間が増えていきます。
仲間が増えていっても、セリフを読むと誰なのかが特定できるのです。
著者である伏瀬さんのキャラクター設定がめちゃくちゃ上手いからこそ成り立っている作品ですね。

おわりに

異世界転生ものと言われている作品の中でも、モンスターへの転生の草分け的な位置づけの本作。
異世界である現代の知識を使ってはいますが、メインは知識無双ではありません。
問題解決の方法の多くが、現地のモンスターや人たちの力を結集させています。
中には、リムルの能力頼みのところもあるにはありますが。

読者が作品に入り込みやすくするためのツールとして、異世界転生が使われています。
そのため、他の異世界転生ものに多くある主人公最強とは程遠いリムルが、押し寄せる問題をどう解決していくのか。
さまざまなモンスターや人の思惑が入り混じって展開していく物語は、異世界転生もののくくりから飛び出しているといえるでしょう。
ファンタジー世界を舞台に、しっかりと組み上げられた物語を読みたい方におすすめです。