気軽にスチームパンクを読んでみたい。
今までになかったスチームパンクを読んでみたい。
そう思ったことがある方は、ぜひ『英国幻想蒸気譚I-レヴェナント・フォークロア-』を読んでみてください。
スチームパンクは、現実の絶頂期を超えて発展した蒸気機関やそれを前提とした技術体系や社会を舞台とした物語といえます。
技術体系や社会が違うということは、スチームパンクの世界と現実とは大きく離れているのです。
そのため、読者はストーリーを追いかけつつ、登場する技術体系や社会についても知っていく必要がありますよね。
登場する技術体系や社会についても知っていく必要があるということが、スチームパンクを気軽に読めない理由の一つではないでしょうか。
また、スチームパンクというジャンル名にもなっている通り、スチーム、つまり蒸気機関が重要な要素になっています。
蒸気機関が世界的なエネルギー源になっていることが前提になっているため、部分的に見れば世界観が近いんですよね。
なので、作家さんごとに特色はあれど、たくさんのスチームパンクを読んでいるとこの世界観はどの作品だったか混乱してくる、というのもスチームパンクあるあるだと思っています。
『英国幻想蒸気譚I-レヴェナント・フォークロア-』
『英国幻想蒸気譚I-レヴェナント・フォークロア-』は、特徴的なスチームパンクとなっています。
それは、スチームパンクをベースとしていますが、都市伝説、魔法、異能力が入り乱れた世界観のためです。
ファンタジーか SF かといったら、スチームパンクは SF に分類されるジャンルだと思います。
そんなスチームパンクに、ファンタジーに分類されるであろう都市伝説、魔法、異能力がミックスされた『英国幻想蒸気譚I-レヴェナント・フォークロア-』。
世界観の説明はあまり多くなく、また多く映像化されているファンタジー要素が入っているため、気軽に読むことができるスチームパンクとなっております。
さらに、都市伝説、魔法、異能力がミックスされているため、今までになかったスチームパンクとなっているのです。
著者
『英国幻想蒸気譚I-レヴェナント・フォークロア-』の著者は、白雨蒼さん。
カクヨムという小説投稿サイトで活動されている方で、【電撃《新文芸》スタートアップコンテスト】に応募、編集部特別賞を受賞した本作でデビューされた作家さんです。
カクヨムの自己紹介には、剣と魔法が飛び交うファンタジーが好きで、スチームパンクとサイバーパンクに傾倒している、という書かれていましたので、本作は著者さんの好きなものが詰め込まれた作品なんだろうな、と思いました。
内容紹介
改めて『英国幻想蒸気譚I-レヴェナント・フォークロア-』を紹介します。
19世紀末、大英帝国の首都であるロンドンで請負屋を営んでいる極東人・封神幎(ツカガミ・トバリ)と錬金術師・ヴィンセントの二人。
そんな二人に舞い込む依頼は厄介事ばかり。
混沌に彩られしロンドンに渦巻く都市伝説を追う二人の前に次々と現れる『鋼鉄の怪物《レヴェナント》』。
これは、虚実が織り成す鋼鉄と蒸気の幻想譚となっております。
感想
読み始めたときは、スチームパンクの作品だと思っていました。
ですが、イメージしていたスチームパンクとは違うスチームパンクだったのです。
読み進めるごとにどんどん増える情報量。
都市伝説、魔法、異能力が次々に飛び出し、次はどうなるんだろう、というワクワク感。
冷静に考えるとここまでの情報量があるとお腹いっぱいってなりそうなんですが、読んでいるときにはお腹いっぱいなんて思いませんでした。
極東人であるツカガミ・トバリがなぜロンドンにいるのか?
錬金術師のヴィンセントとは何者なのか?
レヴェナントの正体とは何か?
様々な謎や疑問を引き連れて物語が進んでいきます。
本筋とは関係ない小話的な依頼かと思いきや、読み進めていくとしっかり本筋につながっているのです。
スチームパンクだから元気なときに読もうと思って後回しにしていた過去の自分に小一時間説教したいですね。
先が気になる好奇心が刺激され、どんどん読み進めていきました。
スチームパンク感はあまり強くないですね。
都市伝説や魔法、異能力が出てくることもあってイメージしやすく、最初から最後まで楽しんで一気読みしてしまいました。
納得感のある結末。
さらに続きそうなエンディング。
デビュー作とは思えないくらい素晴らしい小説でした。
気軽にスチームパンクを読んでみたい。
今までになかったスチームパンクを読んでみたい。
そういう悩みがある方に読んでほしい1冊です。
あ、1巻だけでは解決しないので、ぜひ2巻の『英国幻想蒸気譚II ‐ブラッドレッド・フォルクール‐』も用意してから読み始めてくださいね。