夜ふかしログ

30代サラリーマンが育児・家事・在宅勤務が終わったあと、夜更かしをして読んだ本を紹介したりしなかったりするブログ

与えられた役割に全力で取り組んでも好転することは限らない『数字で救う! 弱小国家 2 電卓で友だちを作る方法を求めよ。ただし最強の騎兵隊が迫っているものとする。』 / 長田 信織 (著), 紅緒 (イラスト)

仕事で、急にトラブっている現場に行かされることってありますよね。
説明もそこそこに現場に行くと、偉い人やその場に詳しい人から指示をされて役割を与えられます。
右も左もわからないけど、何かを改善していかないといけない。
まずは与えられた役割を全力で取り組もう。
たぶん、多くの人はこう考えると思うんですよ。
ですが、だいたいそういう現場って、今までにないくらい身を粉にしてがんばっても全然改善されません。
むしろ悪化しているんじゃないか、とさえ思うような状況になっていくことのほうが多いです。

好転させたいのになかなか好転しない

本書の主人公、ナオキとソアラもそんな状況になっていきます。
1巻で辛くも戦争を乗り切ったソアラ王女率いる弱小国家ファヴェールですが、戦後賠償で財政が火の車。
さらには、薄氷を踏むがごとくの綱渡りをやってのけた宰相ナオキと、門閥貴族との溝は深まるばかり。
ナオキ状態って、ぽっと出の異邦人が、よくわからない数式と不可解な単語を並べ立てて王女に取り入ったと思われている状態なんですよね。
しかも、ナオキが宰相になったから、経験豊富な侯爵が裏切った。
ファヴェールの心意気を見せつけてやろうと思って準備していたのに、ろくな戦闘もさせてもらえずに戦争が終わった。
しかも、敵国が連れてきた傭兵たちが盗賊化している、というマイナス評価ばかり。
ナオキやソアラの視点から見ると、なんとか致命傷は避けられた、というプラスなんですけどね。
そんな状態で、勝手に仲良くなれるわけありません。
財政再建のきっかけを作るため、ファヴェール国の主戦場、西方戦線の縮小をもくろんだところから物語が始まります。

西方戦線を指揮する総司令は、ソアラの従兄弟で公爵のライアス。
西方戦線を支えるルーリッツという都市を占領した立役者の一人です。
このライアスというのが、なかなかに曲者というか難物というか。
体育会系の取りまとめ役やリーダー役がぴったりなイケメンなのです。
立て板に水、というくらいライアス自身の考えを理路整然と口にし、ソアラを圧倒していきます。
圧倒されたソアラは、現場に詳しいライアスに言われるがまま、現地の有力者との面会という役割を与えられます。
ライアスに信用されていないナオキは、ライアスが考えた戦略を実現するにはどうしたらいいか、膨大な資料の山から分析するという役割を与えられます。
ナオキもソアラも、西方戦線の状況などの知識はありません。
また、現地に詳しく、総司令という立場にいるライアスの指示のため、唯々諾々と与えられた役割に全力投球していくのです。
そう、冒頭で書いた状態になるのです。
どんなにがんばっても、状況は好転していきません。
むしろ、疲弊してどんどん悪化していきます。

与えられた役割に全力投球していたナオキとソアラ
二人は何がきっかけとなって、状況を好転させていくのでしょうか。
きっかけをつかんでも、すぐにうまくいくとは限りません。
キーワードは、感情と理論、です。

ナオキとソアラは当初の目的通り、西方戦線を縮小することができるのか。
財政再建のめどを立てることはできるのか。
ナオキとソアラが数学的な視点から、解決策を導き出していきます。

おわりに

暗黙の了解ほど、ズレが出た時のダメージが大きいものはないですね。
顔を合わせて話しているときは、通じ合っている、同じ考えだって思ったとしても、離れてみると相手とは全然違うことを考えていたりします。
きっとこうだろう、という暗黙の了解、思い込みを基準に行動し続けると、大きなトラブルのきっかけになるかもしれません。
そういう点でも、仕事に活かせる内容が多く盛り込まれている小説です。

1巻に続き、2巻である本書も数学的な要素や様々な理論が登場します。
これを読むと、ちょっと勉強したくなりますね。
ライトノベルではありますが、仕事では指示されることが多い人に読んでほしい作品です。

そういえば、友達はできたんですかね。