夜ふかしログ

30代サラリーマンが育児・家事・在宅勤務が終わったあと、夜更かしをして読んだ本を紹介したりしなかったりするブログ

柴ばあと豆柴太 / ヤマモトヨウコ (著)

Twitter で無料公開されていた物語を読んだのが、買うきっかけでした。

東日本にある架空の港町、福音浜。
「私には生意気な孫がいる」という言葉から始まる物語。
痛いことや怖いことがあったら親指を握り込むんだ、そうすると力が入るだろうと生意気な孫に教える祖母。
教えた半年後の2011年3月11日、福音浜の町をも襲った東日本大震災による津波
津波によって冷たくなった孫の遺体の手は、親指が握り込まれていました。
そんな孫の遺体と対面し、泣きながら孫をほめる祖母。
そこでTwitterで無料公開されていた物語は終わり。

たった4ページの漫画。
その4ページを読んで、涙があふれてきました。
私自身が被災者というわけではありません。
せいぜい、放射能で父方の実家が立入禁止区域になったままだというくらいです。
でも、そんな私でも、この4ページはこれから先、2度とあっちゃいけない光景だと思いました。

東日本大震災からの物語

東日本大震災から9年がたった2020年。
津波の被害を受けた福音浜の海には、瓦礫がどかされ、盛土をし、巨大な堤防が築かれていました。
それだけでは、ダメなんです。
人が戻ってこないのです。

そんな津波の被害を受け、復興中の福音浜で、柴ばあはお弁当屋さんをやっています。
柴ばあのお弁当家さんの看板犬が、豆柴太。
その一人と一匹がこの物語の主役です。
柴ばあと豆柴太が中心となって、人と人との思いをつないでいきます。
食事で。
言葉で。
行動で。
柴ばあと豆柴太は、その持てるものすべてを使い、全力でつないでいきます。
つなぐのは生きている人同士だけではなく、生きている人と亡くなった人との思いも。
そんな柴ばあと豆柴太の周りに、笑顔が増えていくのです。

間違えることも、勘違いすることも、思い込みで行動することだってあります。
10年がたち、大事な娘と孫のため、柴ばあは大きな決断をします。
その決断は、10年前にはできなかった決断。
でも、大事な大事な決断なのです。
ぜひ、柴ばあの決断を読んでください。

おわりに

東日本大震災から10年。
2021年3月時点の行方不明者は2,500人以上。
まだまだ家族のもとに帰れていない人たちがいます。
でも、会えないからといって、家族じゃなくなったわけではありませんよね。
離れていても、顔を合わせられなくても、家族は家族なんです。
まだ帰れていない2,500人以上の人が、なるべく早く家族のもとに帰れることを願っています。

そして、震災から10年がたった今、世界中で COVID-19 が猛威を奮っています。
10年という節目は、海の底や諸外国までを含めた大捜索する理由づけに使えたはずなのに。
そんなことを嘆いても仕方ありません。 緊急事態宣言や、蔓延防止措置が出て、家族と会うことができなくなった人もいます。
そういう私も親兄弟と会えない状態なんですけどね。
こんなにも会えないからこそ、お互いに連絡をしてみるのがいいかもしれないですね。

今だからこそ、東日本大震災を経験した人にも、経験していない人にも読んでほしい。
こんなに素敵な物語を書いてくれて、ありがとうございました。