夜ふかしログ

30代サラリーマンが育児・家事・在宅勤務が終わったあと、夜更かしをして読んだ本を紹介したりしなかったりするブログ

嫌われ勇者に転生したので愛され勇者を目指します! ~すべての「ざまぁ」フラグをへし折って堅実に暮らしたい!~ / 鈴木 竜一 (著), とよた 瑣織 (イラスト)

小説投稿サイトの「カクヨム」で公開されていましたが、2021年5月22日にツギクルブックスから発売されました。

Web 小説の最近の流行りである「ざまぁ」。
その「ざまぁ」される側に転生した主人公が、「ざまぁ」されないようにがんばるお話です。

本作の主人公は、バレットという公爵家の嫡男に転生した男性ですね。
男性は元になった Web 小説のファンで、最新話をかかさず読んでいました。
最新話と書いたとおり、元になった Web 小説は完結していません。
原作でのバレットは「ざまぁ」された後ですが、物語としてはまだまだ続いているようです。
原作に描かれていないことは、主人公にもわかりません。
そうすると、何がきっかけで「ざまぁ」ルートに戻ってしまうかわからない主人公ができることと言えば、タイトル通り愛され勇者になることなのです。

物語を複雑にする仕掛け

そんな「ざまぁ」をされるバレットに転生した主人公ですが、バレットの記憶を完全に受け継いでいるわけではありません。
時間がたってから思い出したり、周りの人の言動をきっかけで思い出したり。
バレットとしての記憶が歯抜けの状態で「ざまぁ」を回避するための行動を心掛けていきます。
歯抜けになっている記憶や、原作には描かれていないことが起こり、後々「ざまぁ」されないよう立ち回ることを要求される主人公。
愛され勇者を目指して行動するのですが、それまでの言動とは大違いなバレットに、周囲の人たちは不審な目で見てきます。

転生してバレットの元人格がいない状態で、いろいろな不都合を回避するためには、バレットの元人格の記憶が必要です。
でも、バレットが原因になっている序盤では、バレットの記憶を完全に受け継いでしまうと、主人公は先回りしていろいろと対処してしまう。
それじゃあ面白くないですよね。
物語を面白くするための仕掛けとして、歯抜けの記憶なんだと思います。
もっと早く思い出しておけば対処できたのに。
そう頭をかかえる主人公が、どのように解決していくのか。
事前準備ができないときの発想力や思考の瞬発力が楽しめる物語だと思います。

それから、ときどき原作にはない出来事が起こっています。
原作にない出来事が起こった原因は、主人公が原作と違う行動をしたからだけなのか。
それとも、他の要因があるのか。
1巻では、原作にない出来事が起こったときにどうやってリカバリをするのかを考え、行動していきます。
今後、原作にない出来事が起こった背景や理由が語られるといいな~と期待しています。

おわりに

将来「ざまぁ」されるきっかけの目をつぶしている段階なので、気持ちがスカッとする場面はそんなに多くありません。
まだ少しずつ、身近なクラスメイトの意識を変えているくらいですね。
バレットの性格がゆがんでしまった理由も出てきましたが、本当にそれだけが理由なんでしょうか?
婚約者になるティーテとの初対面のときは、何が良いことで何が悪いことなのかがわかっている子ども、という感じだったのでもうちょっと何があるんじゃないか、と勘繰ってしまいますね。

バトルシーンもありますが、どちらかと言えば人とのかかわりに重点が置かれている1巻です。
この後、「ざまぁ」される側のバレットがどう立ち回るのか。
本当に「ざまぁ」されずに済むのか。
このあとの展開が気になります。