夜ふかしログ

30代サラリーマンが育児・家事・在宅勤務が終わったあと、夜更かしをして読んだ本を紹介したりしなかったりするブログ

どの家庭にも起こりうる産後うつ編を収録『Shrink~精神科医ヨワイ~ 7』

子どもが産まれた方、おめでとうございます!
これから産まれる方、体調には気をつけて、ご自愛ください!

早速ですが、「産後うつ」という言葉を身近に感じますか?
それとも、自分には関係ないことだと思いますか?

産後うつ」は、出産後の女性の約10%がかかるとされています。
ただでさえ、科学的根拠のない〇〇神話を押し付けられているのに加え、どんな症状が出るかもわからない感染症への対策。
2020年10月に発表された筑波大の調査によると、新型コロナウィルス感染拡大後、倍以上に増えている可能性があるそうです。
そう、産後1年未満の母親の5人に1人は「産後うつ」の可能性があります。

『Shrink~精神科医ヨワイ~ 7』は、そんな「産後うつ」を取り扱った、第32話 産後うつ② ~ 第34話 産後うつ④が収録されています。
他に、弱井先生の過去に触れる、第35話 マーガレットが咲く丘①、第36話 マーガレットが咲く丘②の計5話です。

他人事じゃない「産後うつ

実は、カユウ家も第一子のときは「産後うつ」の危機がありました。
第一子が産まれたとき、僕は家から片道2時間のお客様先への常駐をしており、家にいる時間 = 寝ているという状態。
お互いの職場の距離を考えて選んだ土地に住んでいたため、実家は遠く、近所の人との交流もほとんどありませんでした。
そのため、妻が相対するのは第一子だけ。
来る日も来る日も、言葉の通じない我が子と一緒にいるしかなかったのです。

会社としては幸運、僕個人としては残念なことに、常駐先の方に評価いただき、常駐期間の延長が決定してしまいました。
予定では生後3か月目くらいから自社勤務に戻る予定でしたが、9か月目になるくらいまで片道2時間通勤を続けなくてはなりません。
家に帰ったタイミングで第一子が泣いていれば、寝かしつけを変わるくらいしかできない日々。
土日に顔を合わせても、妻の顔は疲れ果てていました。

妻が「産後うつ」を避けられたのは、3か月検診で保健士さんからいただいたアドバイスでした。
近所に児童館があり、乳児を連れた母親だけの集まりがある、というのです。
それを聞いた妻は、さっそく児童館へ。
そこで出会った児童館の職員さんや他のお母さんたちとの会話が、妻のリフレッシュになりました。

奇しくも近いタイミングで、常駐先の方から、土日どちらかでも妻に一人で出かける時間を作ったほうがいい、というアドバイスをいただきました。
ですが、僕がなかなか覚悟を決めることができず、妻一人の外出は多くても2週間に1度くらいだったかと思います。

意思疎通のできる大人との会話、妻一人の時間により、「産後うつ」を回避することができました。
今にして思えば、周りの人に恵まれたおかげですね。

産後うつ」の一例を知ることができる

とはいえ、「産後うつ」の体験を実際に聞く、というのはなかなかできることじゃありませんよね。

産後うつ」とはどんな状態なのか、そうなる前にどんな手段をとることができるのか。
実例をふまえて知ることが、当事者になったときにどれだけ動けるかに関わってきます。

『Shrink~精神科医ヨワイ~ 7』を読んで、「産後うつ」とはどんな状態なのかの一例を知ってほしいと思います。

出産は全治2~3か月の交通事故にあったようなもの。
それだけ体にダメージがある中、母親は乳児の面倒を見ているのです。
そんなの1人でやりきれることじゃないですよ。

まとめ

子育てする人が経済的にも社会的にも生きづらいですよね。
給料よりも保育園にかかる費用のほうが高い、なんていう方も多くいらっしゃると思います。
やむにやまれぬ事情で外出したときに限って、心無い言葉をかけられてしまった方もいらっしゃると思います。

これからの未来を作っていく子どもを育てている人たちが、安心して子どもを育てられる社会にしたいですよね。
社会全体で子育てする人を支えていくためにはどうしたらいいのかを考えていきたいと思いました。

子どもが産まれた方、これから子どもが産まれるという方。
可能性としてはどのご家庭でも起こりうる「産後うつ」に備え、一例を知っておくといいですよ。

ぜひ、読んでみてください。

理系にわかりやすい伝えるためのまとめ方を知ることができる『理系の伝え方―最良の知恵を生み出す「ロジック&コミュニケーション」』 / 籠屋 邦夫 (著)

誰かに何かを伝えるとき、なかなか伝わらないと思ったことはありませんか?

自分の伝え方が悪いんじゃないか。
そう思って伝え方の書籍やサイトを読み、日々勉強しているんですよね。
そんなにがんばっているのに、改善されている気がしない。
その気持ち、私にもわかります。

私は IT 企業で、プロジェクトマネージャーの役割についています。
担当している案件では、社内外との調整を行い、プロジェクトをうまく回すことを求められる役割。
お客様からの要望をヒアリングしたり、進捗状況の報告や確認事項のすり合わせだったり、他の人よりも人と話す機会が多いのです。
伝えるために資料を用意して台本を作りますが、込み入ったことや初めての事象を説明するときは聞き手の理解力頼みになってしまうことも。

対面で打ち合わせをしていたときを思い返すと、身振り手振りを交えてどうにかして伝えようともがいていました。
ですが、感染症対策をきっかけにリモートでの会議になったことで、身振り手振りを見せることは難しい。
ビデオをオンにしていていも、伝わらないまとめ方をしていては、伝わるものも伝わらないと思いました。

どうやってまとめていったらいいかを悩んでいる今、読んだ本はこちら。

『理系の伝え方―最良の知恵を生み出す「ロジック&コミュニケーション」』 です。

著者は、籠屋 邦夫 (こもりや くにお) さん。
現在は、未来創造&カンパニーという企業でコンサルタントとして活躍されている方です。
籠屋さんは、コンサルタント会社であるマッキンゼーで勤務されていた経歴の持ち主。
コンサルタントという人に伝えることが仕事である籠屋さんの長年の経験から、ロジカルな理系思考によってうまく伝えるにはどうしたらいいかが書かれている本になっております。

おすすめポイント3点

『理系の伝え方―最良の知恵を生み出す「ロジック&コミュニケーション」』 をオススメしたい3つのポイントをご紹介します。

  1. 文章がわかりやすい
  2. 自分の伝え方も改善できる気になる
  3. 34 も方程式が紹介されているから読み終えたらすぐに取り入れられるものがある

それぞれを詳しく紹介しますね。

1.文章がわかりやすい

書かれている言葉がわかりやすく、読みやすいのです。
これはどういう意味だろう?と悩むこともなく、スイスイ読んでいくことができます。
その結果、書かれていることの全体像を受け入れやすくなるのです。

出てくる言葉が難しいと、読んでいる途中で言葉の意味を調べますよね。
調べるということは、読むという行為を中断しているということ。
中断すると、読む行為を再開するまで新しい情報は入ってきません。
再開するまでの時間があいてしまうと、記憶がおぼろげになり、中途半端な理解で読み進めることにもなりがちです。

ですが、『理系の伝え方―最良の知恵を生み出す「ロジック&コミュニケーション」』 はわかりやすい言葉で書かれており、読んでいる途中で言葉の意味を調べることはありませんでした。
そのため、最初から最後まで一気に読むことができ、書かれていることの全体像が分かりやすくなりました。
全体像が分かっているので、あとから活用するのも比較的簡単です。

2.自分の伝え方も改善できる気になる

明確に書かれているわけではありませんが、思考を変えればうまく伝わるよ、ということがあちこちにちりばめられています。
何度も繰り返し目にするので、自分も思考を変えればうまく伝わるんじゃないか、自分を変えていけるんじゃないか、という気持ちになってきます。

本書を手に取る人は、うまく伝わらないことに困っている人。
伝わらないことが何度もあると、自信を喪失してしまうんですよね。
そんな自信喪失気味の私でも、できるかも、と思わせてくれるのです。 うまく伝わらなかったときに読み返すことで、失った自信を取り戻すきっかけになりますよ。

3.34 も方程式が紹介されているから読み終えたらすぐに取り入れられるものがある

そして、本書の最大のオススメポイントは、読み終えてすぐに取り入れられるということ。
34 の方程式にまとめられているので、自分が困っていることピンポイントに取り入れることもできます。
伝える場面での考え方や、準備などについても触れられているので、今の作業状況に合わせたヒントが得られるのです。

中には思い込みや、自分の考え方のクセに気づくきっかけになる方程式もあります。
自分の状況、困っていること、伝えたい内容によって、どこから取り入れるかを自分で選べるのもうれしいところですね。

まとめ

伝えることに悩んでいる理系の人は多いと思います。
きちんと伝えよう、正しく伝えようと思うあまり、伝わらなくなっているということもあるでしょう。
そんな理系の人が読みやすく、自信を持つきっかけを得られ、すぐにでも取り入れられる内容がまとまっている本です。

伝えることに悩んでいる人にオススメの1冊です。

ぜひ読んでみてください。

ブログを楽しく続けるためのノウハウが満載『読まれる・稼げる ブログ術大全』 / ヨス (著, イラスト), 染谷 昌利 (監修)

ブログを持っているけれど、更新することがなくて止まっている状態になっていませんか?

緊急事態宣言が出ておうち時間が増えたことで、ブログを始めたという記事を多く見ました。
ブログを始めたはいいけれど更新するネタがない、という記事もあり、ブログを続けるのは難しいことなのだと思います。

私自身、ブログに何を書いたらいいかわからず、更新していない時期がありました。
更新頻度は高くないですが、2014年から7年ほどブログを続けることもできています。

今回は、ブログを更新するヒントをもらった本を紹介します。

『読まれる・稼げる ブログ術大全』は、月間125万PVのプロブロガーのヨスさんが書いた「読まれるブログ」になるためのノウハウが書かれた本です。

ヨスさんは香川県に住み海外移住を目指しているプロブロガーです。
そんなプロブロガーのヨスさんが主宰されているオンラインサロン「ヨッセンススクール ブログ科」で、多くの成功ブロガーさんを輩出したノウハウが1冊の本にまとまっています。

実は、あまりにもわかりやすく実践的な内容が盛りだくさんで、本に収まりきっていない部分もあるとのこと。
本に収まりきっていない部分は、読者特典として PDF ファイルで読むことができるという親切さがうれしいですね。

ブログ運営を考えるきっかけになった3点

ブログの更新ができていないときにこの本を読み、楽しく続けていくためにはどのようにブログを運営していこうかを考えるきっかけを得ることができました。
考えるきっかけになった点を3つ、ご紹介します。

1. ブログの特性やできることがわかりやすくまとめられている

なんだかんだで7年ほどブログを運営してきましたが、ブログの特性やできることというのを意識していませんでした。
一度公開したものは、よっぽどの間違いがない限り編集や書き直しをしてはいけないんだと思い込んでいました。
ブログはいつでも書き直していいんです。

どうして公開したあとに編集や書き直しをするのか、よくわかっていませんでした。
それは、ブログの特性やできることを意識していなかったのでわからなかった、と言えます。
公開したあとに編集や書き直しをするのは、読んでくれる方に最新情報をお伝えするため。
そう知ることができたので、これからは編集や書き直しをやっていこうと思いました。

ブログの特性やできることがわかったことが、どうやって運営していくかを考えるきっかけになりました。

2.読者の方の目線に立つことの必要性がわかりやすい

ブログを公開日記ととらえていた部分がありました。
有名人でも何でもないのに日記を公開しても、読んでくれる方は増えないですよね。

ブログは日記ではなく、読んでくれる方の困ったを解決する情報なのです。
私自身もそうですが、困ったときにはブログを参考にすることがありますよね。
ですが、自分が書いているときは困ったを解決することを意識していませんでした。
困ったが解決できないブログでは、読んでくれる方が増えるわけないんですよね。

読んでくれる方の困ったを解決することを意識することが、何を書いていくかを考えるきっかけになりました。

3. ブログを続けるための仕組みづくりのヒントがある

読んでくれる方の困ったを解決する情報を書くって、なかなか難しいですよね。
こんなこと書いたら、もっと詳しい人に怒られるんじゃないかって気にして、書けなくなっている方が多いのではないでしょうか。
この本を読むと、書けないという心理的ハードルが低くなりますよ。

どうやってブログを楽しく続けていくことができるか。
ヨスさんのノウハウは、楽しく続けることに重点が置かれています。
ブログを書くあなたが、楽しく続けるための仕組みづくりのヒントがたくさんありますよ。

ヨスさんが書かれているノウハウを読み、私もブログを楽しく続けていきたいと思うようになり、改めてブログ運営を考えるようになりました。

まとめ

『読まれる・稼げる ブログ術大全』は、すでにブログを始めているけど続けられていない私のような人にも、もう一度ブログをやろうと思わせてくれる本です。

ヨスさん自身がブログを楽しく続けているから、このようにわかりやすく実践的なノウハウを教えられるのでしょう。
これからはヨスさんのようにブログを楽しく続けていきたい、と思いました。

私のようにすでにブログを持っているけど続いていない方だけでなく、これからブログを始めようと思った方にもおすすめの一冊です。
ぜひ読んでみてください。

30歳から夢を追いかけ始めてもいいじゃないか『三十路病の唄』1巻/ 河上だいしろう (著)

夢を追うのは10代20代までで、30代になったら現実を見なきゃいけない。
そう思っていませんか?

そんなことはありません。
いくつになっても夢を追っていいんです。

ただ、悲しいことにこの国の多くの人々は、夢によって応援するかどうかを変えてしまいます。
プロゲーマー、ミュージシャン、芸人などが夢だというと、否定されることのほうが格段に多い。
周りの人、とくに先生や親がこぞって否定をしてくると、「自分の夢は間違っているんだ」という感覚になり、その夢を諦めてしまう子どもがいるのです。
諦めるくらいなら本気じゃなかったんだろうって?
子どもたちはいつだって本気で全力です。
それでも先生や親がさんざん否定してくるので、泣く泣く諦めているだけなんですよ。
だからこそ、何かのきっかけがあれば、何歳だったとしても再び夢に向かってもがいていくことができる。
僕はそう思っています。

叶えられていない夢がある。
もしくは、僕と同じように、夢という夢が思い当たらない。
そんなあなたに読んでほしい本があります。

『三十路病の唄』

30歳というと、4年生大学を卒業して順当に就職していると8年目くらい。
新卒から勤めている場合には中堅どころとして、さまざまな仕事を任されているころですね。
早い人は、何か役職についているかもしれません。

そんな30歳になった主人公の6人は、高校の同窓会を機に仕事を辞め、夢に向かってもがき始めます。
6人には、会社員をやっていては叶えられない夢があるのです。
プロゲーマー、ミュージシャン、芸人などなど。
周りの人たちからすれば、いい歳になって夢を追うなんて、と嘲笑う対象なのかもしれません。
人並みの生活が幸せだと思う人からすれば、ただのギャンブルだって思うかもしれません。
それでも彼らは夢に向かってもがくのです。
周りからどう言われようとも、夢をつかむために、できることはなんでもする。
それが彼らの強さであり、魅力なんです。

思い返せば、僕には夢という夢がありませんでした。
なりたい職業、なりたい姿というのがイメージできなかっただけなのかもしれません。
焦がれる夢への思い、という経験がなくても、この物語を楽しむことはできます。
むしろ、経験がないからこそ、彼らと同じ思いを抱いてみたい、経験してみたい、と思うようになりました。
まだまだ夢が浮かんではいませんが、彼らの夢が叶うことを願って2巻を楽しみに待っています。

抱いた夢が諦めきれない。
夢ってよくわからない。
そんなあなたに、ぜひ『三十路病の唄』を読んでいただきたいです。

スチームパンク×都市伝説×魔法×異能力『英国幻想蒸気譚I-レヴェナント・フォークロア-』 / 白雨蒼(著), 紫亜(イラスト)

気軽にスチームパンクを読んでみたい。
今までになかったスチームパンクを読んでみたい。

そう思ったことがある方は、ぜひ『英国幻想蒸気譚I-レヴェナント・フォークロア-』を読んでみてください。

スチームパンクは、現実の絶頂期を超えて発展した蒸気機関やそれを前提とした技術体系や社会を舞台とした物語といえます。
技術体系や社会が違うということは、スチームパンクの世界と現実とは大きく離れているのです。
そのため、読者はストーリーを追いかけつつ、登場する技術体系や社会についても知っていく必要がありますよね。
登場する技術体系や社会についても知っていく必要があるということが、スチームパンクを気軽に読めない理由の一つではないでしょうか。

また、スチームパンクというジャンル名にもなっている通り、スチーム、つまり蒸気機関が重要な要素になっています。
蒸気機関が世界的なエネルギー源になっていることが前提になっているため、部分的に見れば世界観が近いんですよね。
なので、作家さんごとに特色はあれど、たくさんのスチームパンクを読んでいるとこの世界観はどの作品だったか混乱してくる、というのもスチームパンクあるあるだと思っています。

『英国幻想蒸気譚I-レヴェナント・フォークロア-』

『英国幻想蒸気譚I-レヴェナント・フォークロア-』は、特徴的なスチームパンクとなっています。
それは、スチームパンクをベースとしていますが、都市伝説、魔法、異能力が入り乱れた世界観のためです。
ファンタジーか SF かといったら、スチームパンクは SF に分類されるジャンルだと思います。
そんなスチームパンクに、ファンタジーに分類されるであろう都市伝説、魔法、異能力がミックスされた『英国幻想蒸気譚I-レヴェナント・フォークロア-』。
世界観の説明はあまり多くなく、また多く映像化されているファンタジー要素が入っているため、気軽に読むことができるスチームパンクとなっております。
さらに、都市伝説、魔法、異能力がミックスされているため、今までになかったスチームパンクとなっているのです。

著者

『英国幻想蒸気譚I-レヴェナント・フォークロア-』の著者は、白雨蒼さん。
カクヨムという小説投稿サイトで活動されている方で、【電撃《新文芸》スタートアップコンテスト】に応募、編集部特別賞を受賞した本作でデビューされた作家さんです。
カクヨムの自己紹介には、剣と魔法が飛び交うファンタジーが好きで、スチームパンクサイバーパンクに傾倒している、という書かれていましたので、本作は著者さんの好きなものが詰め込まれた作品なんだろうな、と思いました。

内容紹介

改めて『英国幻想蒸気譚I-レヴェナント・フォークロア-』を紹介します。
19世紀末、大英帝国の首都であるロンドンで請負屋を営んでいる極東人・封神幎(ツカガミ・トバリ)と錬金術師・ヴィンセントの二人。
そんな二人に舞い込む依頼は厄介事ばかり。
混沌に彩られしロンドンに渦巻く都市伝説を追う二人の前に次々と現れる『鋼鉄の怪物《レヴェナント》』。
これは、虚実が織り成す鋼鉄と蒸気の幻想譚となっております。

感想

読み始めたときは、スチームパンクの作品だと思っていました。
ですが、イメージしていたスチームパンクとは違うスチームパンクだったのです。

読み進めるごとにどんどん増える情報量。
都市伝説、魔法、異能力が次々に飛び出し、次はどうなるんだろう、というワクワク感。
冷静に考えるとここまでの情報量があるとお腹いっぱいってなりそうなんですが、読んでいるときにはお腹いっぱいなんて思いませんでした。

極東人であるツカガミ・トバリがなぜロンドンにいるのか?
錬金術師のヴィンセントとは何者なのか?
レヴェナントの正体とは何か?
様々な謎や疑問を引き連れて物語が進んでいきます。
本筋とは関係ない小話的な依頼かと思いきや、読み進めていくとしっかり本筋につながっているのです。

スチームパンクだから元気なときに読もうと思って後回しにしていた過去の自分に小一時間説教したいですね。
先が気になる好奇心が刺激され、どんどん読み進めていきました。
スチームパンク感はあまり強くないですね。
都市伝説や魔法、異能力が出てくることもあってイメージしやすく、最初から最後まで楽しんで一気読みしてしまいました。

納得感のある結末。
さらに続きそうなエンディング。
デビュー作とは思えないくらい素晴らしい小説でした。

気軽にスチームパンクを読んでみたい。
今までになかったスチームパンクを読んでみたい。
そういう悩みがある方に読んでほしい1冊です。

あ、1巻だけでは解決しないので、ぜひ2巻の『英国幻想蒸気譚II ‐ブラッドレッド・フォルクール‐』も用意してから読み始めてくださいね。

人類史上最大のベストセラーのわかりやすい解説本『カラー版 イチから知りたい! 聖書の本』 / 大島 力 (監修)

人類史上最大のベストセラーを知っていますか?
ハリー・ポッター』シリーズや『ロード・オブ・ザ・リング』シリーズだろうって?
いえいえ、違います。

人類史上最大のベストセラー、それは『聖書』です。
正確な販売部数はわかっていないそうですが、だいたい60億部と言われているそう。
ギネス記録にも認定されています。

さて、そんな世界的なベストセラーである『聖書』を読んだことがない方におすすめしたい本があります。
それが 『カラー版 イチから知りたい! 聖書の本』 です。

著者は?

大島 力 (おおしま ちから) さんという方が監修されています。

東京神学大学旧約聖書学にて博士課程を修め、博士 (神学) 号を取得。
その後、日本基督教団阿佐ヶ谷教会伝道師、同石神井教会牧師を経て、現在は青山学院大学で教授をされているとのこと。
また、日本旧約学会、日本聖書学研究所、日本基督教学会に所属されているそうです。

すごく簡単にまとめてしまうと、聖書を学術的に研究している専門家、と言えるでしょう。

どんな本か?

聖書研究の専門家である大島さんが監修された、『聖書』の解説本になっております。

『聖書』にはどんなことが書いてあるのか、そもそも『聖書』とは何か、から始まり、内容の解説や補足、他の歴史書との差異などを図を交え、わかりやすく解説されています。
年表も書かれているため、大まかな流れを俯瞰して知ることができます。
聖書のどの部分の説明なのか、どうしてそういう形でまとめられたのか、『聖書』の成り立ちも書かれていたので、『聖書』を読む以上の情報量になっていると思います。

そして、各章の間に書かれている1ページコラムが面白いのです。
ユダヤ教の祭りなどの説明が書かれていて、実際に現地で見てみたいと思いました。

感想

無宗教の人ほど人類史上最大のベストセラーである『聖書』の概要は知っておいたほうがよい、と思いました。
ビジネスマン、特に営業職に就いている方は、初対面や関係性が浅い人との雑談では政治、宗教、家庭事情を話さないよう心掛けている方も多いと思います。
だからと言って、宗教やその聖典である『聖書』について知らなくていい、ということにはなりません。
2017年度のJMR調査レポート (https://www.tci.ac.jp/wp-content/uploads/2015/08/JMR_report_2017.pdf) によると、2016年時点のキリスト教の信者数は 24.5 億人。
世界の人口の3分の1はキリスト教に関わっている方ということになります。
そうすると、いつ何時、相手方から話を振られるかわかりません。
話を振られたときに適切な回答をするため、『聖書』の内容は知っておいたほうがよいのです。

また、『聖書』は、宗教の聖典というだけではないことを知りました。
『カラー版 イチから知りたい! 聖書の本』を読むまでは、『聖書』には宗教を信じる者への教えが書いてあると思っていました。
信者数が多いキリスト教聖典だから、60億部もの販売部数になったのではないか、とも。
ですが、『カラー版 イチから知りたい! 聖書の本』を読んだ結果、『聖書』には歴史書としての面があることを知ることができました。
史書でもあるということは、『聖書』を読んでも気づかなかった可能性があると思っています。
『聖書』は聖典だという思い込みで読めば、歴史のことが書いてあっても、教義を補強するための説明なんだろう、と読み飛ばしてしまっていたかもしれません。

そして、『聖書』の内容は、現代の社会情勢にもつながっています。
『聖書』に書かれている舞台は、現在のパレスチナ周辺。
2021年9月末で米軍が撤退し、ニュースになっているあのパレスチナです。
エルサレムは3つの宗教の聖地になっている、という話を聞いたことがある方もいるのではないでしょうか。
それはなぜかというと、3つの宗教の聖典が『聖書』だからなのです。
現在の社会情勢は現代で始まったのではなく、『聖書』が書かれた時代から始まっていた。
そう思うと、現代の社会情勢の見方も変わってくるような気がしています。

まとめ

人類史上最大のベストセラーである『聖書』。
今後のビジネスにいつ『聖書』が関係してくるかわからない世の中です。
『カラー版 イチから知りたい! 聖書の本』を読んで、『聖書』の概要をつかんでおきましょう。

私にはこの物語の犯人がわかりませんでした『護られなかった者たちへ』 / 中山 七里 (著)

もし、あなたの知らぬ間に大切な人が護られていなかったとしたら、あなたはどうしますか?

東日本大震災から4年後、仙台市内のとあるアパートの一室で手足と口を拘束され、餓死した遺体が発見されました。
被害者の名前は三雲忠勝 (みくも ただかつ)。
仙台市内の福祉保健事務所で働く職員です。
財布の中の金銭に手をつけられていなかったことから、警察は怨恨の線で捜査を始めます。
しかし、家庭でも職場でも三雲のことを悪く言う者はおらず、むしろ善人と称されるほど。
そのため、捜査は暗礁に乗り上げてしまいます。
犯人の目星すらもついていない中、再び餓死した遺体が発見されます。
遺体の状態は記者クラブにも流していない共通項が多く、十中八九同一人物によるものと判断されました。
二人目の被害者の名前は城之内猛留 (じょうのうち たける)。
現職の宮城県議会議員で、他派閥の議員からも人格者と一目置かれる存在。
捜査本部は善人や人格者が狙われていると考え、前科者や精神科に通院歴があるものが犯人と推測します。
しかし、宮城県警捜査一課所属の苫篠誠一郎 (とましの せいいちろう) は、三雲と城之内には何らかの共通点があるはずだと考え、独自に捜査を行っていきます。
そして、苫篠は被害者二人の共通点を発見するのです。

なぜ、三雲と城之内の二人は、餓死という手段で殺されなければならなかったのか。
本当に護られなかった者とは誰なのか。

あなたに、この物語の犯人がわかりますか?

ストーリーから話はそれますが、本書では、最初の被害者である三雲の勤務先の福祉保険事務所がどんな仕事をしているのか、その一端に触れることができます。
私は知らなかったですし、たぶん多くの読者も知らないことだと思いました。

福祉保険事務所の業務の中には、生活保護の申請の受付と、生活保護受給者の状況確認をするケースワーカー業務があります。
生活保護と聞いて、具体的なイメージが浮かびますか?
私は、収入が途絶えてしまった方を救うセーフティネットということ以外、何も浮かびませんでした。
あとは、テレビのニュースで報じられていた生活保護の不正受給や、生活保護を申請したシングルマザーに福祉保健事務所の職員がセクハラしたといった事件くらいでしょうか。
たぶん、生活保護の申請や受給をしたことのない方は、僕と同じようなイメージだと思います。
そんな私たち読者に対して、現実の生活保護はこれでいいと思うか?という正解がない問題を小説が問いかけてくるのです。
もちろん、小説の中で解決方法は示されていません。
1人で考えても答えが出るとは思えません。
なので、この小説を紹介して、一緒に考える仲間を作りたいと思いました。

それから、この小説を原作とした映画が、2021年10月1日から全国の映画館で公開されます。
舞台は東日本大震災からの10年後の仙台。
ただ、登場人物の名前や立場が一部変わっていますので、もしかしたら小説とは違うストーリーなのかもしれません。
小説との違いを見るため、映画を観に行こうと思っています。

movies.shochiku.co.jp

そして、現実でも、東日本大震災から10年。
まだまだ山積みの問題に目を向け、かすかな声に耳を傾ける。
そのきっかけに、本書を読んだり、映画を観たりしませんか。
そして、みんなで考え、一緒に議論していきましょう。

思いつきで旅に出ると思いがけない出会いがある『ざつ旅 -That's Journey-』 / 石坂 ケンタ (著)

あなたは、旅に出る時は事前に行き先を決めて、現地の下調べをして、きっちりとスケジュールを立てるタイプですか?
スケジュールを決めるのって楽しいですけど、準備が大変なときもありますよね。
この本を読んで、こんなざつな旅でも旅行に行っていいんだっていうことを知ってください。

主人公の鈴ヶ森ちかは、漫画家を目指す大学生。
新人賞を受賞し、編集担当さんがついたのはいいが、連載をとれずに悩んでいた。
ある日、ネームを3本もっていったにもかかわらず、全部がダメ。
落ち込んでいる中でふっと口にした「旅に出たい」という思い。
軽い気持ちで SNS で旅先候補のアンケートを取ってみたら、自分のフォロワー数を超える投票数が。
あとに引けなくなったちかは、旅に出ることにするのです。

第一話のアンケート結果は、上のほう。
上のほうの中で、駅に置かれていたチラシから見つけた福島県会津若松に向かいます。
地理も歴史も詳しくないちかは、無計画で行き当たりばったり。
そんなざつな旅だからこその思いがけない出会いやトラブル。
どんな出会いがあるのか、どんなトラブルがあるのか。
きっちりしっかり下調べした旅では味わえないドキドキとご覧あれ。

この漫画のすごいところが、鈴ヶ森さんのアカウントがツイッターにあるのですよ。
ツイッター上で本当にアンケートをとって、旅の行き先を決めていました。
自分が投票した結果、どこに旅に出たのかわくわくしながら待つという楽しみもあります。
今はまだ緊急事態宣言が出ている中なので、鈴ヶ森さんも旅を控えているよう。
緊急事態宣言があけたら、北のほうに旅立ってくれるみたいですよ。

緊急事態宣言が延長され、私たちも県境をまたぐ移動は控えた方がよさそうです。
が、緊急事態宣言が解除され、大手を振って旅に出れるようになったら、鈴ヶ森さんのようなざつな旅をしてみませんか?
思いがけない出会いがあるかもしれませんよ。

ヘーゲルを総理大臣に! / 小川 仁志  (著)

貧乏人は救うべきか?
なぜ働くのか?
欲求を満たすのはいいことなのか?

多様化し、複雑化していく現代での悩み。
その悩みを解決するヒントになる本を紹介します。

ヘーゲルを総理大臣に!』

こんな不平や不満をお持ちではありませんか?

自分ひとりが行動を変えたところで、世の中が良くなるわけじゃない。
非常識な人が得をしていることが許せない。
家族なんていないほうが気楽に過ごせる。
近所づきあいなんて面倒だからやりたくない。
国に個人の行動を規制されたくない。
政治家は国民のことなんて見ていない。
結局、僕らは自由じゃないんだ。

でも、これは仕方ないことだ。
私たちには解決できないことなんだ。
そう思っていませんか。
いえいえ、実はすでに解決のヒントが示されているのです。
約200年ほど前のドイツの哲学者ヘーゲルによって。

ヘーゲルに言わせれば、現在の政治にもっとも欠けているものは「哲学」です。
まず、どういう国であるべきなのかという政治哲学があって、それをもとに具体的な政策が掲げられる必要があるのです。
ですが、現実は選挙のたびに耳障りのいい政策が公約としてかかげられ、必ず実現しますと連呼するだけ。
そこには一貫性も実現性も一切ありません。
そんな状態が続いてきたから、失われた20年と言われる今になっているのです。

ヘーゲルの思想から、日本を変えるための3つの原則が掲げられます。
それは、「認め合うこと」「つながること」「生きること」。
この3つを政治哲学として、それらをもとに現状の不平不満や問題点を解決する社会をどうやって作っていくかのヒントを教えてくれています。
ヘーゲルが示してくれたのは、国家は個人の自由を制限するものではなく、むしろ反対に個人の自由を保障し、実現してくれるものだということ。
そして、その場合の国家は、私たちと無関係に存在しているものではなく、私たちがつくるものなのです。
そう、社会は私たちがつくるものなのです。

現状の政治や社会に不満や思うところがある方は、ぜひ読んでみてください。

「君主論」を参考文献にした異色の異世界内政ファンタジー『現実主義勇者の王国再建記 1』/ どぜう丸  (著), 冬ゆき (イラスト)

参考文献に書かれた「君主論」という文字。
まさかライトノベルと呼ばれるレーベルから刊行された書籍の参考文献で目にするなんて。
作中、主人公の相馬一也が君主論マキャヴェッリの名を出しています。
君主論」は現実主義の古典とも呼ばれているそうなので、現実主義者を標榜する相馬一也が読んでいてもおかしくはないですね。
とはいえ、地方公務員を目指している社会経済学部の大学生が諳んじられるほど読み込む本ではないと思いますよ。

その相馬一也のバイブルともいえる「君主論」ですが、書かれたのは16世紀にイタリア。
ニッコロ・マキャヴェッリによって書かれた、様々な君主や君主制の国をを分析し、君主になり権力を保持し続けるにはどのような力量が必要なのかが記載された国家政治論です。
その思想は人間の心理や思考、行動パターンの鋭い洞察や分析に根差したものであるところが、現実主義の古典と呼ばれるようになった所以でしょう。
約500年前に書かれたとはいえ、その人心掌握の方法や、巨大な権力を扱うときの注意点は、現代に生きる私たちが読んでも説得力があります。
君主を経営者、国家を企業と置き換えると、リーダーシップ論やポジショニング理論など現代の経営学にも通じますね。
さまざまな訳書や解説本が発刊されていますので、一度は読んでみることをおすすめします。

さて、「君主論」や孫氏を読んでいる相馬一也は、ある日、異世界に勇者として召喚されてしまいます。
召喚したのは、中世ヨーロッパのようなエルフリーデン王国。
自分の身を守るため王と宰相と議論を交わした相馬一也は、勇者として召喚されたはずなのに、気がついたら王位を譲られているのです。
王位を譲られた相馬一也は、持ち前の合理的精神と現代知識を組み合わせ、次々と新しい政策を打ち出し、かたむいていた王国の財政を立て直していきます。
そして、相馬一也による王国改革の方向性を民衆に知らしめた政策。
唯才令。
「ただ才あらば用いる」の一言で始まった政策は、多くの人材を集め、さらに王国改革を加速させていくのです。
とはいえ、国内にも国外にも心配事は山盛り。
まだまだ相馬一也によるエルフリーデン王国の改革は始まったばかりなのです。

才あらば用いる、と聞いてピンときた方は、三国志が好きな方ですね。
そう、曹操が出した求賢令ですね。
三国志演義では描かれていないかもしれません。
曹操実力主義であったことがわかる逸話です。

他にも、孫氏の兵法を引用している場面もあります。
僕が気付いていないだけで、相馬一也の政策のもとになったものが君主論以外にもたくさんありそうですね。
そして、登場人物たちの心理や思考、行動パターンが現実的なのです。
僕らが知らないだけで、本当にこの異世界はあるんじゃないか。
そう思ってしまうほどの説得力のある作品です。